2024-06-05: 令和6年6月定例会(第3号) 本文
◯7番(中村直行) 新政令和の中村直行でございます。通告に従いまして1議題について、4つの異なる視点から質問をさせていただきます。
さて、今回の議題は、複雑化する困難事例に対応する基幹型地域包括支援センターをであります。御存じのとおり地域包括支援センターは、高齢者の方々が住み慣れた地域で、安心して暮らし続けるための総合相談窓口として、近年は介護や医療ニーズに加え、認知症や障害、ヤングケアラー、DVやギャンブラー、アルコール依存症、権利擁護、成年後見制度、8050問題など複雑化する困難事例への対応が求められております。
こちらのパネルを御覧ください。このため国も、このパネルに示しているように地域包括支援センターの強化として、様々な具体的な在り方を示しております。また、本市も昨年度末に策定しました第9期高齢者福祉計画及び介護保険事業計画において、高齢者やその家族が抱える制度の狭間の問題や複合的な課題への対応ができる体制整備を進めると示しています。私は、国が、こちらのパネルの中で強化案の1つとして示している基幹型の地域包括支援センターの設置、真ん中の部分ですが、すなわち専門的な知識と経験を持つ人材が集結し、多様なニーズに対応できる新たな体制づくりこそが、現在のような多様化・複雑化した社会を、地域共生社会に移行させていくためには必要不可欠と考えております。
そして、基幹型センターは専門的な支援だけでなく、制度の狭間で困難を抱える支援ニーズに対して支える側、支えられる側という関係を超えて、行政のみならず地域の社会資源を活用した包括的な支援体制として、センター間の総合調整や後方支援の役割を果たし、さらには重層的支援体制整備事業における高齢者分野の一翼を担うことで、地域包括ケアシステムの推進に必要な中核的な基盤となり得るものと私は考えております。
それでは、質問要旨(1)基幹型地域包括支援センター導入による支援体制の強化についてから、まず現状把握としまして、ア、本市の高齢化率に伴って、介護ニーズはどのように変化していくと見込んでいますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 初めに、本市の高齢化率については現在26.0%ですが、今後も少子化や生産年齢人口の減少に伴い、26年後の2050年には33.8%までに上昇すると推計しています。
次に、高齢化率に伴う介護ニーズについてでありますが、高齢者の独居・孤立化や医療・介護の複合的なニーズを有する高齢者の増加が見込まれることから、2050年には要支援・要介護認定者数や介護給付費または介護関係の施設利用者数が、いずれも現在の約1.3倍まで拡大されると推定しています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 2050年の本市の推計高齢化率33.8%は、愛知県の34.5%、全国の37.1%に比べるとほんのわずかに低いものの、介護給付費が高齢化率と同様に増加するということは、介護保険料の負担増につながるという非常に深刻な局面を迎えることとして受け止めなければならないと感じます。そして、統計上では推計できませんが、介護サービスでは対応できない8050問題や高齢者の独居・孤立化など、制度の狭間の複合的な支援ニーズが間違いなく増加していることも非常に深刻な問題です。だからこそ、地域包括支援センターの機能強化と基幹型センターの導入が必要になると私は考えるのであります。
では次に、地域包括支援センターの現状確認としまして、イ、現在、地域包括支援センターはエリア担当制で、地域からの相談を必ず受けなければならない状況にあります。このため、電話が頻繁にかかってくるケースが多いですが、この状況に対して本市はどのような支援を考えていますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 中学校区を基本エリアとして、市内7カ所に設置しています地域包括支援センターの相談件数は、令和5年度で延べ6,145件と、4年度よりは1,150件減少しましたが、4年度までは毎年増加傾向でした。相談件数のおおむね3分の2が介護保険サービスに関することで、相談の約6割が電話相談であります。市としましては、地域包括支援センターにおいて、限られた人員体制の中で多岐にわたる相談支援に当たっていただいている現状を踏まえ、愛知県市町村振興協会と共催でケアマネジャーを対象にした介護支援専門員研修を年2回開催し、ケアマネジャーのスキルアップ、ブラッシュアップのための支援に努めています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 地域包括支援センターの相談状況は、介護サービスに偏重しているものの、電話相談件数の多さは現場の負担の大きさを物語っています。そして、限られた人員体制の中で、多岐にわたる相談に対応されている現状は、恐らく非常に厳しい状況だと推察します。そうした厳しい状況を踏まえてのケアマネジャー対象の専門研修は、現場のスキルアップには有効かもしれませんが、電話対応に追われる職員が果たして受講できるのか、あるいは困難事例の対応にどこまで有効・有益な研修なのでしょうか。
次に、もう少しセンターの現状を把握します。ウ、地域包括支援センターのケアマネジャーには、1人当たりの担当人数の制限がないため、現場は疲弊しています。本市として、地域包括支援センターの人員数や配置について、どのような対策を講じる予定ですか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 地域包括支援センターの人員配置基準については、市の関係条例及び要綱に基づき、担当区域内の介護保険第1号被保険者数に応じて定められております。このため、市としては適正に職員が配置されているものと認識しておりますが、昨今の幅広い相談ニーズの対応などから、現状と乖離している場合も考えられますので、今後も現場の声を聞きながら状況把握に努めてまいります。
なお、対策事例としましては、地域のニーズに応えて、昨年度より幡豆地区に新たにサブセンターを設置したところです。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) センターの人員配置は、市の条例や要綱に基づいて行われているとのことですが、ケアマネジャーがケアプラン以外の相談を受ける人数の上限は設定されていないので、実際には現場の負担感や疲弊感を防ぐ手だてにはなっていないのではないでしょうか。また、現状と乖離している可能性も踏まえ、現場の声を聞きながら状況把握に努めていくとのことですが、具体的な対策として、以下の点を提案させていただきます。
人員配置基準の見直しについては、担当区域内の介護保険第1号被保険者数だけではなく、相談件数や複雑なケースの増加を考慮した、より現実的な人員配置基準の見直しを検討すべきです。また、専門職の増員として、ケアマネジャーに加え精神保健福祉士やソーシャルワーカーなど、専門性の高い人員を増員することで多様なニーズに対応できる体制を構築すべきです。サブセンターについては、幡豆地区のサブセンター設置は地域のニーズに対応する有効な取組ですが、ほかの地域にも同様のニーズが存在する可能性があります。さらなるサブセンター設置の可能性について検討すべきです。
いずれも、予算拡大が必要な提案ではありますが、これらの対策を通じて地域包括支援センターの体制強化を図り、ケアマネジャーの負担軽減と質の高い支援体制の構築を目指していく必要があります。
次にエとしまして、認知症患者をケアする家族へのアプローチやヤングケアラーへの問題、貧困の問題など、新たに複雑で困難な業務が増加していますが、これに対する本市の対策はどのようですか。また、これらの業務によって地域包括支援センターの負担がさらに増えている点について、どのように支援を行いますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 認知症患者をケアする家族へのアプローチとして、市では、認知症介護家族交流会を毎月開催し、介護者が集い、日頃抱える悩みを話し合い交流する機会を設けております。また、地域包括支援センターが受けた相談の中で、ヤングケアラーや生活困窮などの複雑化した支援ニーズを把握した場合は、市の長寿課へ連絡してもらい、長寿課から関係部署へつなぐなど、支援の漏れがないように努めています。
議員のおっしゃるとおり、地域包括支援センターでは、今後も複雑化・複合化した相談案件に、より負担が増えていくことが見込まれますが、先ほども答弁しましたとおり、当面は現在のスタッフの専門性を高めるスキルアップなどに努めてまいります。
なお、地域包括支援センターでは毎年、地域の居宅介護支援事業所等のケアマネジャーに対する個別指導や事例検討などの研修会を開催しており、地域人材を育成することで地域包括支援センターの職員に係る負担軽減を図っています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 認知症介護家族交流会や、ヤングケアラーや生活困窮者に対する長寿課と関係機関の連携支援など、様々な取組を行っていることは評価できます。しかし、現場ではこれらの業務増加によって、地域包括支援センターの負担がますます大きくなっている状況が懸念されます。当面は、現在のスタッフの専門性を高めるスキルアップなどに努めてまいりますとのことですが、現状の体制では十分な対応が難しいと感じます。そこで、さらなる支援強化に向けて専門チームとして認知症、ヤングケアラー、貧困問題など専門性の高い分野ごとに専門チームを設置し、担当者を配置することで、より質の高い支援を提供できる体制を構築すべきと考えます。
なお、専門チームを構築できない場合は、専門性の高い外部機関であるNPOや民間団体などとの連携を強化することで、地域包括支援センターだけでは対応しきれない課題に対して、センターの負担軽減と、より効果的な支援体制を構築することが重要だと考えておりますが、次にオとしまして、地域包括支援センターの負担を軽減するために、長期的な人材育成が必要です。本市として、どのような人材育成プログラムを計画していますか。また、その実施に向けた具体的なステップはどのようですか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 先ほども答弁しましたとおり、市はケアマネジャーのスキルアップのための介護支援専門員研修を年2回行っていますが、新たな人材育成プログラムについては現時点では計画しておりません。
なお、各地域包括支援センターにおいては、市からの委託料により自主的に自己研さんなどの研修は受講しています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 新たな人材育成プログラムの計画はなく、現状維持という残念な答弁でありました。
では次に、国が機能強化策として提示しています基幹型導入に関する質問に移ります。
カ、近隣市における基幹型地域包括支援センターの導入事例と、その成果はどのようですか。また、設置によるメリットと具体的な効果はどのようかお伺いします。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 基幹型地域包括支援センターについては、近隣市の岡崎市と刈谷市が導入しています。そのメリットと効果としましては、地域包括支援センターの総合調整及び連携強化、困難事例や先進的な取組等への的確な助言指導、あるいは後方支援を担うことにより、各センターの業務や地域包括ケアシステムの円滑な推進が図られることであります。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) では、そうした導入効果の大きい基幹型でありますが、単刀直入にお尋ねします。
キ、基幹型地域包括支援センターを設置し、地域包括支援センターの負担を軽減する計画はありますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 本市では、今のところ基幹型を設置する計画はありません。先ほど答弁しましたように、基幹型にはメリットがある一方で、他市の例では、本来行政が担うべき業務との整理が必要であったり、センター間の連携の在り方が問題だったりするなどの課題もあると聞いています。本市としましては、長寿課に配置した保健師や社会福祉士などが中心となって、地域包括支援センター連絡会議を定期的に開催し、各センターと適宜連絡調整を行っていることや、各センターを含む様々な関係機関との連携を図っている現状から、長寿課を核として基幹型に求められている一定の役割を担っていると考えています。
したがいまして、現在の体制維持・発展を図りながら、地域包括支援センターの活動をサポートしていきたいと考えています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) では、改めて市長にお尋ねをします。
クとしまして、基幹型地域包括支援センターを設置することで、より質の高い支援を提供できるという考え方があります。この点について、市長の見解を聞かせてください。
◯議長(本郷照代) 市長。
◯市長(中村 健) 基幹型地域包括支援センターを設置する必要性については、各自治体の介護・保健・医療など、各分野における地域性により様々であると考えます。かつて西尾市でも、基幹型のセンター設置を検討したことがございましたが、現場の介護人材不足などの点から、効果的な設置が実現しなかった経緯があるというふうに聞いております。
現在、西尾市では、7つの地域包括支援センターを運営している社会福祉法人や医療法人が、これまでそれぞれの地域に根差した高齢者福祉に関する事業を展開してきております。その上で、先ほど健康福祉部次長が答弁いたしましたように、長寿課が基幹型の一定の役割を担っていることから、新たに基幹型を設置せず現在の体制により、地域包括支援センターの質の高い支援を維持していきたいと考えておりますので、ご理解いただきたいと思います。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 市長の見解、ありがとうございます。基幹型地域包括支援センターの設置の必要性については、確かに地域特性によって異なる点は理解できます。かつて、本市でも検討された経緯があるとのことですが、現場の介護人材不足という課題は、現在も依然として深刻な状況にあると考えられます。現状では、長寿課が基幹型の役割を担っており、現在の体制で質の高い支援を維持していくとのことですが、基幹型センター設置という選択肢を完全に否定するのではなく、人材不足への対応など、センターの機能強化に係る課題については、先ほど私が何点か提案した内容を含めて長寿課が中心となって検討していただき、より質の高い支援体制の構築に引き続き努力をしていただくことを期待して、次の質問要旨に進みます。
質問要旨(2)国レベルで検討されている成年後見制度の改正について、お尋ねします。
高齢社会における成年後見制度の重要性はますます高まっており、近年では判断能力が不十分な高齢者の方々の財産や権利を守るための制度として、その役割が注目されています。そのため、国では成年後見制度の円滑な利用を促進するために抜本的な改正が検討されていると伺っております。ここでは、高齢者の方々が安心して暮らせる地域共生社会の実現に必要不可欠と言われる成年後見制度の現状と課題などについて、お尋ねします。
初めにアとして、成年後見制度利用支援事業について、実施している事業内容、利用者数、成果、課題はどのようですか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 初めに、成年後見制度利用支援事業とは、認知症や知的障害などの理由により判断能力が十分でない方の財産や権利を守るため、身寄りがないまたは親族の協力が得られない場合に、市長が後見開始の申立てを行うとともに、本人の財産が少ない場合には、市が後見人の費用助成を行う制度になります。
次に、令和5年度の高齢者の利用実績は1人で、成果としては、経済的搾取の防止を図ることができたことであります。
最後に、本制度の課題としましては、判断能力が十分ではない当事者本人からの利用相談は難しいため、当事者の入所施設や関わっている相談支援機関が本制度につなぐ必要がありますが、本制度を理解するまでに時間を要したり、支援機関の介入を拒絶したりするケースの場合は、当事者の状況把握が困難なため、申立てまでに時間を要することが挙げられます。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 成年後見制度利用支援事業は、令和5年度に高齢者1名が利用されたとのことですが、これは制度の認知度が低く、利用促進が課題であることを示唆しています。特に、当事者本人からの相談が難しいという課題は深刻です。制度への理解不足や相談支援機関への不信感などが要因として考えられます。そこで、次に本制度の利用促進のために関係機関の連携についてお尋ねをします。
イ、成年後見制度利用促進に向けた取組について、地域包括支援センターや社会福祉協議会など関係機関との連携はどのようかお伺いします。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 成年後見制度利用促進に向けた取組としまして、令和5年度は一般市民と地域包括支援センターなどの福祉専門職員を対象にした成年後見制度の基礎知識に関する研修会を1回実施しました。また、市が成年後見センターを委託しています社会福祉協議会の職員については、成年後見支援のスキルアップのための勉強会を13回受講しています。関係機関との連携につきましては、昨年度は成年後見センターがケース検討会議を4回開催し、地域包括支援センターや医療機関などの職員が参加して情報共有を行いました。
また、成年後見センターへの相談が最も多い地域包括支援センターとは、成年後見申立だけではなく軽度の認知症高齢者等の金銭管理などを行う日常生活自立支援事業の利用を含めて、常時円滑に相談できる関係性を構築しています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 成年後見制度利用促進に向けた研修会開催や関係機関との連携強化など、様々な取組を行っていることは評価できます。特に、成年後見センターと地域包括支援センターとの連携は、高齢者の方々への適切な支援体制構築に不可欠です。しかしながら、先ほども申し上げたとおり成年後見制度の周知が課題だと思います。
そこでウとしまして、成年後見制度に関する情報を、市民が分かりやすく入手できるようにすべきと考えますが、どのように整備する予定ですか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 成年後見制度に関する現在の周知方法は、市ホームページで情報発信するとともに、年1回発行している社協だよりに記事を掲載したり、成年後見センターの作成のリーフレットや法務省発行のパンフレットを関係する行政機関や支援機関などの窓口に配置したりすることになります。
なお、今後も独居・孤立化する高齢者の増加に伴い、成年後見制度の利用ニーズも高まることが見込まれるため、一般市民はもとより、高齢者に接する医療・保健・福祉関係者が、本制度の理解を深めてもらう効果的なPR方法を検討してまいります。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 再質問します。成年後見制度の効果的なPR方法とは、具体的にどのようなことを考えていますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 成年後見制度の具体的なPR方法としましては、先ほど答弁しましたとおり相談支援機関に情報提供することが効果的なため、市内の医療機関、介護保険サービスや障害者福祉サービスの事業者等に勤める職員、約860人が閲覧することのできる専門情報サイト「いげたネット」を活用して、成年後見制度の利用案内や関係する研修会の開催等の情報を積極的に発信することで、制度を必要としている方々に的確に制度が結びつくように努めていきたいと考えています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 成年後見制度のPR方法として、専門情報サイト「いげたネット」を活用し、医療機関や福祉サービス事業者などに対する情報発信を強化するという答弁がありましたが、これにより成年後見制度が必要な方々に的確に結びつくことに期待をします。
次の質問要旨に参ります。高齢者が安心して暮らせる地域共生社会の実現に向けては、年齢に関わらず、誰もがその人らしく生きられる環境を整えることが重要であります。しかし、現行制度では65歳を境に障害福祉サービスから介護保険サービスへの移行を余儀なくされる65歳の壁が存在し、障害のある方々が不利益を被るケースが散見されると言われます。
質問要旨(3)としまして、「65歳の壁」による問題についてお尋ねをします。
初めにアとして、「65歳の壁」によって、障害のある方がどのような不利益を被る可能性があると認識していますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 障害者総合支援法では、障害者が65歳を迎えたときに、それまで利用していた障害者の福祉サービスと同等のサービスがある場合は、介護保険のサービスを優先して利用するという規定があります。いわゆる「65歳の壁」とは、65歳を機に障害福祉サービスから介護サービスに切り替えられたときに発生する格差であると一般的には認識されているものです。具体的には、障害福祉サービスでは低所得者の方は利用者負担がありませんが、介護保険では1割負担が原則であることから、利用者負担額が増額になること、また障害福祉サービスが社会参加の機会を目指した日常生活支援であるのに対して、介護サービスは日常生活に限定した最小限の身の回りの介護支援であるため、障害福祉では必要と認められていた食事などの介助や掃除、外出支援などのサービス量に差が生じるような格差があることです。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) ではイとしまして、「65歳の壁」による問題を解消するために、本市はどのような対策を講じていますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 初めに、利用者負担額の増額については、障害福祉サービスを受けていた人のうち、障害支援区分が2以上などの一定の要件を満たす方は、介護保険サービスに移行した際に、増額された負担額が償還される新高額障害者サービス等給付費により対応しています。
次に、サービス内容の格差については、介護サービスには同等のサービスがない障害福祉固有のサービス、例えば就労支援、同行援護などの継続利用は認められています。また、介護サービスのみでは十分な支援を受けることができないと判断した場合も、障害福祉サービスの利用ができることになっています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) ただいま答弁された対策は、いずれも65歳を迎えた障害者が安心して生活を続けられるための重要な取組です。今後も市として、これらの対策を継続し、さらに充実させていくことが求められます。また、これらの施策が効果的に機能するよう関係間の連携を強化し、対象者に対して適切な情報提供を行うことも重要です。
次にウとして、相談支援体制の強化として、65歳になる障害のある方に対して、医療機関とケアマネジャーが連携して相談支援を行う体制はどのようですか。また、それまで利用していた障害福祉サービスと同様のサービスを継続して受けられるよう、柔軟な運用を行っていますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 65歳を迎える障害者の方に対しては、障害者の相談支援事業所が医療機関及び介護保険のケアマネジャーと連携し、障害福祉サービスから介護サービスに円滑に移行できるような体制は整備されています。
また、先ほど答弁しました、介護サービスではない障害福祉サービスの利用が継続できるように、相談支援事業所と地域包括支援センターでは年1回合同勉強会を開催し、情報交換などを行っています。こうした検証を通じて、障害福祉サービスの適正な継続利用に努めていきたいと考えています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) ただいまの答弁で、相談支援事業所と地域包括支援センターが年に1回合同勉強会を開催し、情報交換を行っている点は重要です。これにより、現場の職員が最新の情報を共有し、より適切な支援が提供できるようになります。そして、65歳を迎える障害者が従来と変わらない支援を受け続けることができ、生活の質を維持できるようになっています。
今後も、65歳の壁に誰も取り残されないような丁寧な対応を求めて、最後の質問要旨に進みます。
質問要旨(4)ひきこもり対策と8050問題への対応について、お尋ねします。
ひきこもりは、爆発的に増加している不登校とともに、今の日本社会の最大の課題の1つです。ひきこもり人口の増加は、少子化を背景とした生産年齢人口のさらなる減少要因として、社会の根幹の崩壊を招きかねない、いわば日本に未来をもたらすかどうかの大変に重く深刻な問題であります。中でも80代の親と同居している50代の子供が、社会的な自立に困難を抱えている8050問題、あるいは7040問題は、家庭内の支援力の低下により解決が非常に難しい問題として、全国はもちろん、本市においても潜在的に間違いなく増加していると思います。
ちなみに、10年後の日本では、ひきこもり状態の方が500万人を超えるのではと警鐘を鳴らす専門家、精神科医の斎藤 環筑波大学教授もいるように、ひきこもり問題は、いつの日か破滅的な社会現象として危機的な事態を招くかもしれないと危惧しています。
では初めにアとして、本市におけるひきこもり状態にある方の推定人数と年齢層はどのようですか、お尋ねします。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 本市におけるひきこもり状態にある方の人数や年齢層については、内閣府が令和4年度に実施しました調査結果で判明した人口比率に基づいて、西尾保健所が推計した人数で報告をします。それによりますと、自室からほとんど出ない、自室からは出るが家からは出ない、近所のコンビニなどには出かけるまでのひきこもり状態の方で、15歳から39歳までの年齢層では494人、40歳から69歳までの年齢層では1,142人と推計されています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 内閣府の調査結果に基づく西尾保健所の推計ではありますが、15歳から39歳までで、つまり子ども・若者総合相談センター「コンパス」の対象年齢の推計が約500人弱というのは、4年目を迎えたコンパスの利用者が340人程度であることからも、それほど現実離れした数字ではないと感じました。そして、より厳しいのが40歳から69歳までの約1,100人と推計される長期にわたるひきこもり状態の方で、先ほど申し上げた8050問題、あるいは7040問題の該当者です。
では次にイとしまして、8050問題の該当者であるひきこもりの支援を行う相談窓口の設置状況、利用者数、相談内容はどのようですか。また、相談窓口は分かりやすく周知していますか、お尋ねします。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 8050問題に関するひきこもりの相談窓口としては西尾保健所があります。令和5年度の相談者数は11人で、面接件数は58件、電話相談件数は26件、訪問件数は1件で、相談内容は、ひきこもり当事者の生活改善、人間関係改善、自立についてです。また毎月1回、保健所職員主催でのひきこもりを考える家族の集いが開催されています。保健所の相談窓口については、愛知県のホームページで周知されています。
なお、地域包括支援センターにおいても8050問題については、ひきこもりの内容によっては対応している場合もありますが、その利用者数や相談内容は把握しておりません。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 40歳以上のひきこもり状態の方の相談窓口である西尾保健所の相談件数が、11人というのは衝撃的でした。つまり、あくまで推計ではありますが、1,000人程度は存在すると思われるひきこもり状態の方は、セーフティネットから漏れてほとんど相談していないということになります。そして、相談窓口の周知方法も、愛知県のホームページに限られているため、さらに効果的な情報発信が必要です。また、地域包括支援センターにおける8050問題の対応も、そもそも利用者数や相談内容の把握がされていないことから、残念ながらセンターでは相談の主眼に置いていないことは明らかであります。こうした非常に脆弱な相談窓口の実態ではありますが、もう少し現状をお尋ねします。
ウとして、ひきこもり状態にある方の社会復帰支援はどのように進めていますか。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 西尾保健所では、精神疾患などがあるひきこもり状態の方については、医療機関や相談支援事業所の利用などを勧め、関係機関の連携により本人や家族のサポートを継続的に行い、社会復帰支援に努めていると聞いています。地域包括支援センターでは、高齢者のひきこもり防止のための各種事業は実施していますが、ひきこもり状態の方に対しては、社会復帰のための情報提供などについては行っていると聞いています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 西尾保健所では、相談数は少ないものの関係機関への連携により、社会復帰支援には努めているようですが、地域包括支援センターの情報提供のみの支援では、なかなか厳しいものがあります。本来であれば、情報提供した後も継続的なサポートが必要になるのですが、情報提供だけでは当事者または家族が相当努力しなければ、社会復帰を果たすことは現実的ではあり得ないと思います。
いずれにしろ、困難を抱える家庭の実態を正確に把握することが、効果的な支援策を講じるための第一歩となります。
そこで次に、市がひきこもり問題に対してどのように実態把握をしているのかについてお尋ねします。
エとしまして、8050問題を抱える家庭が抱える経済的な困窮、介護負担、孤立などの問題をどのように把握していますか、お尋ねします。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 8050問題を抱える家庭の困り感については、就労、生活困窮、介護、障害など複雑化・複合化した支援ニーズが存在すると思いますが、残念ながら西尾保健所や市においても具体的な現状把握は行っておりません。
なお、地域包括支援センターや相談支援事業所などの窓口では、相談内容に8050問題やひきこもり状態の方を抱えていることを把握した場合には、その実態を聞き取り、複合的な課題としてケース会議で検討したり、必要な関係機関につないだりはしています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 確かに、ひきこもり状態の方が抱える困難には、就労や生活困窮、介護、障害など、多岐にわたる支援ニーズが絡み合っているため現状把握の難しさは理解できます。しかし、保健所も市も具体的な把握を行っていないということは、言い換えると、効果的な支援策を講じてはいないということになります。しかし、その一方で、地域包括支援センターや相談支援事業所が8050問題やひきこもり状態の方をケース会議で検討したり、必要な関係機関につなげる取組を行っていたりする点は、先ほどの情報提供のみの支援に比べると少しは評価できます。こうした厳しい状況であっても、市は、ひきこもりや8050問題を抱える当事者または家族に対して、その困り感に寄り添い、実効性のある支援を提供するための取組を行っていかなければなりません。なぜなら、そうした生きづらさや困難さを相談したくても、相談できない多くの市民がいるからです。地域共生社会の実現のためにも、まずはひきこもりや8050問題といった複雑な課題に対応できる専門的な知識と、スキルを持った人材の確保と育成が不可欠になります。
最後の質問になりますが、今後の方策として、ひきこもり状態にある方々に対する支援体制の強化や、相談員のスキルアップに向けた研修実施に向けた考え方をお尋ねします。
オ、専門性向上と地域共生社会の実現に向けた人材確保・育成について、どのように取り組んでいきますか、お尋ねします。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) これまで答弁してきましたとおり、本市においては子ども・若者総合相談センター「コンパス」の対象上限年齢である39歳を超えるひきこもり状態の方の積極的な相談窓口としては、西尾保健所だけになります。そして、西尾保健所を除いて地域包括支援センターなどの相談窓口においては、数は少ないですが、能動的に把握したひきこもり者に対応しているのが実態です。
したがって、ご質問の専門性向上と人材確保・育成の取組については、現在の相談員が各種研修会に参加して、ひきこもり相談のスキルアップを図るか、あるいはコンパスの相談実態を学んでひきこもり支援のレベルアップを図っていくことが方策としては考えられますが、8050問題の対応としては非常に厳しい現状であることは否めません。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 先ほどから、自分は何度も今の厳しさを指摘してきましたが、市は厳しい現状であると正直にご答弁をされました。しかし、これは西尾市だけが遅れている問題ではありません。ひきこもりや8050問題のように、既存の福祉制度が活用できない困難事例は、今後、間違いなく増加し、それに対する包括的な総合相談支援体制をどのように構築するかというのは、日本全国の市町村がまさに試行錯誤している幅の広い問題でもあります。だからといって、解決に動かないことは行政としての使命を放棄することになります。
あえて再質問しますが、8050問題はもちろん、ひきこもりをはじめとする複合化・複雑化した支援ニーズに対応していく包括的な支援体制を構築しなければ、本市における地域共生社会の実現は困難と考えますが、何か打開策は考えていますかお尋ねします。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 議員のおっしゃるとおり、本市における全世代に対応した総合相談支援窓口がないことと、社会的困難や生きづらさの多様性・複雑性から表れる支援ニーズと、福祉制度の間にギャップが生じて、既存のセーフティネットでは対応できない困難事例が、今後増加していくことは明らかであります。
したがって、市民の属性や世代を問わず生きづらさなどの相談を、包括的に受け止める体制整備については本市においても必要と考え、本年度より福祉課では地域共生社会実現のための新たなセーフティネットとして、重層的支援体制整備事業への移行に関する調査研究に着手しました。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 新たなセーフティネットとして、重層的支援体制整備事業への移行に関する調査研究に着手したと答弁をされました。私としては、大変喜ばしいこととして受け止めはしましたが、これまで自分を含めて何度も一般質問で重層事業へ移行を求めてきました。
ここで、改めて再質問します。重層的支援体制整備事業への移行について、調査研究しているとご答弁されましたが、これまでの議会答弁の方向性を大きく変えたのはなぜですか。また、重層的支援体制整備事業移行の検討結果はいつ頃公表されるか、お伺いします。
◯議長(本郷照代) 健康福祉部次長。
◯健康福祉部次長(鈴木貴之) これまでも市は、重層的支援体制整備事業には取り組まないと答弁してきたわけではありません。御存じのとおり、重層的支援体制整備事業とは市町村が既存の制度を活用して、地域事情に合わせた包括的な相談支援体制を構築していくものであるため、その在り方は市町村ごとに異なるものになります。市は、これまでは既存の体制を大きく変えずに重層事業と同様な支援を実施できると答弁してきましたが、今回の一般質問でも明らかなように、やはり年齢や制度の狭間で困難さや生きづらさを抱える市民に対する、より実効性のある支援を実施するためには、現状の体制を進化発展させていく視点で、重層事業への移行について調査研究する必要性があると判断したからであります。
なお、重層事業に対する検討結果については、本年度末をめどに公表できるように準備を進めていきたいと考えています。
◯議長(本郷照代) 中村直行議員。
◯7番(中村直行) 西尾市は、制度の狭間で困難さや生きづらさを抱える多くの市民に対するより実効性のある支援は、現状の体制では実現不可能と判断して、ようやく重い腰を上げ、私や本郷照代議員、大塚久美子議員、中根志信議員らが何度も求めた重層的支援体制整備事業への移行の検討をスタートさせました。本年度末までに、現状の体制を進化発展させた検討結果が公表されるとのことですが、このように行政が私たち市議会の意見と現場の実情に歩調を合わせて柔軟に対応する姿勢は高く評価したいと思います。特に、支援が行き届きにくい市民への効果的な支援策を検討することは、市民生活の質の向上に直結する重要な取組です。
また、市民や関係機関との連携を深め、透明性のある情報提供を行うことで、市民の信頼を高めていくことも重要です。高齢化が進む西尾市において、誰もが安心して暮らせる地域共生社会の実現のため、今後の重層事業の検討過程に可能であれば地域包括支援センターの機能強化や基幹型の導入についても織り込んでいただき、また現場の声にもしっかりと耳を傾けて、市民ために実効性のある包括的な支援体制が新たに構築されることを願いまして、私の一般質問を終わります。ありがとうございました。
〔7番 中村直行 降壇〕
◯議長(本郷照代) 中村直行議員の質問は終わりました。