令和6年12月定例会 12月3日


◯7番(中村直行) 皆様、こんにちは。新政令和の中村直行でございます。通告に従いまして2議題13項目について一般質問をさせていただきます。執行部の皆様におかれましては、市民に寄り添った誠意あるご対応をよろしくお願い申し上げます。
 議題1 西尾市民病院にふさわしい経営形態の検討についてであります。
 本日は、西尾市民病院の経営形態について、地域住民の皆様にとって最善の医療体制を確保するための質問をさせていただきます。
 まずは、こちらの資料を御覧ください。こちらは、今年8月31日付の三河新報の1面記事であります。私たちの市民病院は、地域医療の最後のとりでとして多くの人々の健康と命を支えてきたかけがえのない存在です。しかし、現状は25年連続の赤字決算(未処理欠損金98億2,611万円)という深刻な経営課題を抱えています。この厳しい状況をただ悲観するのではなく、むしろ市民の皆様と課題を共有し、未来を切り開くための新たな一歩を踏み出すときではないでしょうか。
 私には5歳になる孫がいます。その子の世代が大人になったとき、地域に安心して医療を受けられる環境があること、それこそが私たちが今、取り組むべき使命だと感じています。医療の質の確保、少子化への対応、そして、持続可能な財政運営の実現は、未来世代に対する私たちの責任であり、共通の願いです。
 本日は、市民病院の現状や課題を皆様と共に見詰め直し、地域医療を守るための最善の方法を模索する場にしたいと思います。この場が未来に向けた持続可能な医療体制の構築に向けた大きな一歩となることを心より願っています。
 経営責任者である市長には、この病院の抱える課題をどのように捉え、具体的にどのようなリスクを想定しているのか、そして、それにどう対応しようとされているのか、ご見解を伺いたいと思います。
 質問要旨(1)として、市民病院が現在抱えている経営上の問題と今後のリスクについて、市長の見解を伺います。

283◯議長(永山英人) 市民病院事務部長。

284◯市民病院事務部長(高山 崇) 令和5年度決算では約7億円の純損失で、実質的に25年連続の赤字決算となりました。経営上の課題は、病院事業会計、とりわけ医業収益の改善を図ることだと考えております。
 医業収益の改善策としましては、不足する診療科への常勤医師の招聘が最も重要であると考えております。大学医局や愛知県への訪問を諦めずに行い、諸事情を見据えながら医師派遣依頼を効果的かつ継続的に実施しております。現時点では詳細をお話しできませんが、このような粘り強い訪問が実を結び、来年度は例年以上に常勤医師が増員できる見込みとなっております。
 今後のリスクとしましては、2040年に向けて人口減少と少子高齢化への加速が進む日本全体で必要な医療人材の奪い合いが起こり、当院にとって必要な人数の確保がさらに困難になってくることが懸念されます。当院としましては、働きやすい環境を整えることで、西三河南部西医療圏の南部地域の地域医療体制を堅持してまいりたいと考えております。

285◯議長(永山英人) 中村議員。

286◯7番(中村直行) 病院が25年連続で赤字決算を抱え続けている現状を深刻に捉え、医業収益の改善に向けて常勤医師の確保に取り組まれている点は重要だと感じております。特に大学医局や愛知県への粘り強い働きかけは、地域医療を守るための努力として評価できます。また、医療人材確保がさらに困難になる2040年問題に向けて、地元で医療人材を育てる仕組みづくりや働きやすい環境の整備など、地域全体で支える取組を進めることも重要です。今後とも市民の声を生かした具体的な施策を期待しております。
 次の質問に参ります。
 市民病院が地域医療を支えるためには、患者さん一人一人にしっかりとした医療を提供することはもちろんですが、その医療を持続可能にしていくために、病院の経営もしっかり考えなければなりません。患者一人当たりの収益をどう向上させていくかは、その両方を実現するために欠かせない視点だと思います。例えば、特定の診療科を強化して、市外に流れてしまう患者さんを地域で受け入れられるようにすれば、地元で安心して医療を受けられる環境が整うだけではなく、病院の収益にもつながるはずです。
 要旨(2)としまして、患者一人当たりの収益向上を図るために、特定の診療科やサービスの強化について、どのような検討がされているか、お伺いします。

287◯議長(永山英人) 市民病院事務部長。

288◯市民病院事務部長(高山 崇) 放射線科では、令和5年4月に放射線治療装置を更新し、常勤の放射線治療医を採用したことによって複雑な形状や広範囲の腫瘍を一度に治療でき、常時、放射線治療ができる体制を整えました。また、形成外科では、令和5年6月からレーザーセンターを開設し、ピコウエイレーザー装置などの機器を用いて、あざ、しみ、ほくろの除去などの治療を始めました。また、令和6年4月には訪問看護ステーションを設置したほか、整形外科において開業医の先生方と連携し、骨折の二次予防に備える「高齢者骨折センター」のサービスを展開するなど、特色のある医療サービスを多角的に進めております。
 今後は手術支援ロボットを導入し、泌尿器科において前立腺がんや膀胱がんなどの手術体制を整備してまいります。さらにはレーザー内視鏡治療を導入し、腎臓でつくられた尿がたまる部分の腎盂がんや尿管がんを治療する診療体制を整備していくことを検討しております。

289◯議長(永山英人) 中村議員。

290◯7番(中村直行) 具体的な取組が進んでいるのは、とても心強いです。ただ、市民にとって、これらのサービスがどのくらい利用されているのか、また、どのような成果があるのかを知ることで、さらに親近感を持てるのではないでしょうか。加えて、利用方法をもっと分かりやすく伝える工夫があれば、地域全体で医療がより身近に感じられると思います。
 次の質問に参ります。
 市民病院は、地域医療を支える中核的な存在として、市民にとって安心と信頼のよりどころです。しかし、医療を取り巻く環境は年々厳しくなっており、財政的な持続可能性や経営の安定化をどう実現していくのかが私たちにとって大きな課題です。
 要旨(3)としまして、地域の医療ニーズに応えつつ、限られた資源を効果的に活用していくため、市民病院の持続的な運営と経営の安定化に向けた将来的なビジョンはどのようですか、市長の考えを伺います。

291◯議長(永山英人) 市民病院事務部長。

292◯市民病院事務部長(高山 崇) まず初めに、質問要旨(2)の答弁でございますけれども、訂正がございます。形成外科においての高齢者骨折センターと申し上げましたが、整形外科の誤りでございます。それから、レーザーの内視鏡治療装置の導入でございますが、肝臓と申し上げましたが、腎臓でつくられた尿がたまる腎盂がんということでございますので、訂正をお願いします。申し訳ございません。
 それでは、質問要旨(3)の答弁でございます。
 総務省の「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」には、「持続可能な地域医療提供体制を確保するためには、限られた医師・看護師などの医療資源を地域全体で最大限効果的に活用することが必要である。」とされています。そのために病院間の連携を強化する「機能分化・連携強化」を進めることが必要であると考えております。
 西三河南部西医療圏の南部は高齢化の進展が早く、夜間を含めた救急医療体制を持つ医療機関としては当院が最も南に位置をしております。団塊ジュニア世代が65歳以上になり、65歳以上の高齢者が人口の約35%を占める2040年問題が深刻化するまでには、医療圏の関連病院との連携を強化し、急性期病院としての信頼を今以上に揺るぎないものにできるように努めてまいります。

293◯議長(永山英人) 中村議員。

294◯7番(中村直行) 確かに総務省のガイドラインにある、限られた医療資源を地域全体で最大限効果的に活用するという方向性は、特に医師や看護師不足が深刻化している現在の医療環境において、非常に現実的で重要な考え方だと思います。病院間の連携や機能分化を進めることは、医療資源の無駄を省きながら患者さんに必要な医療をしっかり届けるための効果的な方法であります。
 ただ、一方でこのガイドラインの考え方を地域で具体化するには、現状の実情をどれだけ反映できるかが鍵になると思います。医療資源を効率化する一方で、地域住民の近くで診てもらいたいという安心感や急な病気やけがの対応といったニーズをどう満たしていくのか、このバランスをしっかり考える必要があります。
 これはほんの一例ですが、ある市民の方から、胸が痛むような切実な相談をいただきました。とても健康的に暮らしていた70代の男性が、ある日、突然脳梗塞を発症しました。戸ケ崎町にお住まいだったため、救急車で西尾市民病院に搬送しようとしましたが、常勤の脳血管の専門医が不在で対応できないとのことであります。次に、安城更生病院へ受入れを要請しましたが、ほかのオペが入っており、受入れがかないませんでした。その後、碧南市民病院に確認しましたが、医師がおらず、最終的に名古屋大学から急遽往診してもらうことで一命は取り留めました。しかし、この男性は左半身に麻痺が残り、現在もリハビリ生活を続けながら、ご家族共々、日々、大変なご苦労をされています。もし最初に西尾市民病院で受入体制が整っていたならば、後遺症もなかったか軽度で済んだ可能性が高かったのではないでしょうか。この現実を目の当たりにして、地域医療の課題とその改善の必要性を痛感せざるを得ません。単なるコスト削減ではなく、地域医療全体の質を向上させるものになることを期待しております。
 次の質問に参ります。
 地域医療を取り巻く環境が年々厳しくなる中、あま市民病院は令和元年度より指定管理者制度を導入し、地域医療振興協会に経営を委託され、経営改善や医療提供体制の強化に取り組んでいます。この制度導入によって医療収支の改善や病床利用率の向上といった一定の効果が見られています。
 質問要旨(4)としまして、他市では指定管理者制度や公設民営化による経営改善の成功事例が見られますが、西尾市民病院においても同様の制度を導入する可能性について、どのようにお考えになりますか。

295◯議長(永山英人) 市民病院事務部長。

296◯市民病院事務部長(高山 崇) 令和4年度末に策定した「西尾市民病院経営強化プラン」におきましては、平成30年度に今後の抜本的な在り方を見極めるべく市民世論調査を実施したところ、「多額の経費がかかっても、市が責任を持って運営すべきである」との回答が10.8%、経営改善を図り市が運営すべきである」との回答が64.4%で、合わせて7割を超える結果であり、この結果を受け、現時点におきましては経営委譲を優先的に検討すべきではないという方針を打ち出しております。
 したがいまして、経営強化プランでは、独自の経営強化策を進めることを最優先にしており、病院職員のモチベーションにも直結することから、現時点では他の経営形態について、あえて申し上げることはできません。

297◯議長(永山英人) 中村議員。

298◯7番(中村直行) 市民世論調査の結果から、西尾市民病院の現状を維持しながら独自の経営強化策を進めるという方針は、市の責任を果たそうとする姿勢が感じられます。
 一方で、指定管理者制度の成功事例を踏まえると、この制度を検討する価値があるのではないでしょうか。
 11月12日に元あま市議会議員の加藤 正様のご紹介で、あま市役所を訪問させていただきました。そこで、山本雄一副議長から、あま市民病院の指定管理者制度導入に関する詳細なお話を伺いました。「あま市民病院は、よそに流れている患者を取り戻すという明確な目標を掲げ、指定管理者制度を導入することで、経常収支比率や病床利用率を大幅に改善させただけではなく、安定した医療供給体制の構築にも成功しています。医師の確保や総合診療体制の強化といった難題にも、指定管理者のネットワークと専門性を最大限に生かして取り組んできました」。この言葉からは、あま市民病院がいかに挑戦を重ねて成果を生み出してきたかが伝わってきました。その実績は西尾市民病院にとっても非常に参考になるものであり、未来の地域医療を考える上で重要なヒントを得ることができたと感じています。
 また、指定管理者制度を導入することは、公営時代には得られない経営資源の活用や柔軟な人員配置を可能にするなど、現場の負担軽減にもつながると考えられます。市民に安心して利用してもらえる病院の運営を実現するためにも、経営強化プランと並行して指定管理者制度の導入の可能性を慎重に検討することを提案いたします。
 私自身も公益社団法人地域医療振興協会の吉新通康理事長に二度ほどお会いし、お話を伺ったことがあります。地域医療振興協会は、都市部から僻地まで幅広く病院や診療所を運営し、効率的な経営と安定した医療提供を実現している公益法人です。全国で約26の病院、50の診療所を管理し、公設民営方式の豊富な実績とノウハウを持っています。特に、あま市民病院のように経常収支や病床利用率を改善した成功例が多く、医師派遣や地域医療研修にも力を入れています。
 またBSC、バランスとスコアカードを活用し、目標達成の仕組みが整備されている点も強みです。こうした取組を西尾市民病院にも生かすことで、財政や医師不足といった課題解決につながると考えます。特に豊かな海のある生活を守る僻地医療に使命感を持っていました。本市も沿岸部や佐久島を抱える僻地で、その範疇にあると思います。
 質問要旨(5)に参ります。
 指定管理者制度を導入することで、運営効率や経営改善が期待できる一方で、職員の待遇や雇用に関する課題も慎重に検討する必要があります。特に、退職金の積立状況や処遇の変化は、職員の将来の安心感に大きく関わる重要な要素です。導入後の職員待遇について、適切な配慮がなされることが制度を円滑に進めるための鍵となると考えております。
 そこで、指定管理者制度を導入した場合、職員の待遇に関する課題が出てくると思いますが特に退職金の積立て状況はどのようか、お伺いします。

299◯議長(永山英人) 市民病院事務部長。

300◯市民病院事務部長(高山 崇) 会計基準に従って退職給付引当金を計上しており、令和5年度決算では11億3,535万7,710円となっております。

301◯議長(永山英人) 中村議員。

302◯7番(中村直行) 退職給付金引当金が11億円以上確保されている点は評価できます。また、理事者側が指定管理者制度に慎重な姿勢を取るのも、市民病院の経営や職員の雇用が地域に与える影響を考えると理解もできます。
 一方で、指定管理者制度には効率的な経営や医療人材の発展・強化といったメリットがあります。地域医療の安定化やサービス向上が期待できる事例もあるため、制度導入を完全に排除するのではなく、現状の運営形態との比較や課題への対策を並行して検討する価値があると思います。特に、職員の退職金や待遇は、市民病院の安定運営に直結する重大な課題です。制度導入後もこれまでと同等と待遇が維持されるのか、具体的に示すことで職員の不安を解消し、導入を進める土台が整うと思います。
 実際、あま市では退職者は半数にとどまり、残った職員は市職員として他部署へ配置転換されています。市民病院の未来を考える上で、現状の課題を整理しつつ、指定管理者制度の可能性を建設的に議論すべきではないでしょうか。
 次の質問に参ります。
 質問要旨(6)としまして、どの公営病院でも、一般会計からの繰り出しは避けられない現実がありますが、その負担が自治体財政に与える影響は非常に大きく、慎重に考えるべきです。
 一方で、地域医療を支える公営病院にとって、一定の財政支援が不可欠であることも事実です。西尾市民病院においても、経営が厳しい中、一般会計からの負担金について、今後の方針はどのようか。また、他の自治体病院の経営形態と比較して、適切な一般会計の負担の在り方について、市長の見解を伺います。

303◯議長(永山英人) 市民病院事務部長。

304◯市民病院事務部長(高山 崇) 令和5年度決算において、一般会計からの繰入金は総額19億7,394万4,000円であり、そのうち、総務省が定める基準に沿った繰入額は16億787万2,000円、基準外の繰入額は3億6,607万2,000円になっております。
 この基準外の繰入れについては削減をするよう、経営改善に努めなければならないと考えております。
 県下の自治体病院との比較では、病院の規模や診療体制の違いがあるため一律に判断することは困難ですが、繰入総額、人口一人当たりの金額とともに、おおよそ中位に位置していると認識しております。

305◯議長(永山英人) 中村議員。

306◯7番(中村直行) 一般会計からの繰入金が19億円以上という現状は、市民病院の運営を支えるために必要な支援である一方で、独立採算性を前提とする医業会計の原則からすると、少しでもほかの事業に財源を回せるように努力する必要があると思います。特に基準外の繰入金が3億6,000万円以上となっている点については、病院経営の改善を進める中で、少しずつ削減していく努力をしていくべきと考えます。
 一方で、あま市民病院は、指定管理者制度導入により経常収支比率が改善し、平成28年度の87.9%から令和4年度には102.9%と黒字化しました。医業収支比率も令和4年度には88%を達成しています。
 一方、西尾市民病院の経常収支比率は、令和5年度で92.51%、医業収支比率は令和4年度で77.93%にとどまっています。経常収支比率や医業収支比率を改善させた事例は、西尾市民病院にも大いに参考になると考えます。
 地域医療を守る使命は大切ですが、それと同時に、持続可能な財政運営を実現するためには、収益を上げられる仕組みづくりや効果的な運営が欠かせません。市民病院や本来の独立採算性に近づくことで市の財政にも余裕が生まれ、ほかの必要な事業に資金を振り分けるということが可能になります。このバランスを取ることが今後の重要な課題だと思います。
 次の質問に参ります。
 未処理欠損金は、公立病院の経営の健康状態を表す大事な指標です。これを改善していくことは、地域医療を続ける上で避けられない課題です。累積欠損金が98億2,611万円という厳しい状況を考えると、このままだと病院の経営だけじゃなく、市全体の財政にも影響が出てくるのではないかと心配をしております。地域医療を守りつつ財政の負担を軽くするためには具体的で効果のある対策が必要だと思います。
 質問要旨(7)としましては、未処理欠損金の改善に向けた具体的な対策や今後の計画はどのようですか。また、長期的に持続可能な財政運営を実現するために、どのような手法で損失の解消を目指しているのか、伺います。

307◯議長(永山英人) 市民病院事務部長。

308◯市民病院事務部長(高山 崇) 多額の累積欠損金の処理については会計制度上の累積となっておりますが、これについては具体策を講じる予定はしておりません。
 長期的に持続可能な財政運営の実現に向けて、「西尾市民病院経営強化プラン」を推進し、急性期病院としての存在価値を高めることで、地域の中核病院としての体制を確保してまいりたいと考えております。

309◯議長(永山英人) 中村議員。

310◯7番(中村直行) 累積欠損金の処理について、具体策が講じられていないという点については、市民病院の厳しい経営状況を考えると少し心配が残るところであります。確かに、西尾市民病院経営強化プランでは推し進めて、急性期病院として存在価値を高めることは重要でありますが、それだけでは累積欠損金の解消に十分ではないと思います。具体的な改善策が示されていない現状では、市民や職員にとっても病院の未来に対する不安が拭えないと思います。例えば、医業収益の改善や経費削減の具体的な計画、外部からの資金調達の可能性など、少しでも前向きな取組が示されると、市民からの安心、信頼感も高まるのではないでしょうか。
 また、累積欠損金比率が131%という数字を見ますと、この現状を放置すれば、いずれ病院の経営だけでなく、西尾市全体の財政にも深刻な影響を及ぼす可能性が高いと強く危機感を抱いております。地域医療を守るという使命感を果たし続けるためには、今のうちに抜本的な改革に踏み切る必要があるのではないでしょうか。
 また、あま市民病院では、指定管理者制度により総合診療体制を確立し幅広い疾患への対応が可能となり、地域内で医療を完結する仕組みを維持しています。さらに、整形外科や消化器内科など専門診療科の拡充を進め、令和5年度には歯科口腔外科を設置するなど、地域のニーズに応じた医療提供を実現しています。
 経営が危機的な状況に陥った際、指定管理者制度を導入することで経営効率を向上させ、常勤医師を確保し、救急搬送の受入れを増やし、病床利用率の改善を実現しました。このような成功事例を学びながら、西尾市民病院でも体力があるうちに最適な経営形態への転換や改革のタイミングを慎重かつ迅速に検討すべきだと考えます。
 そこで、要旨(8)としまして、病院の体力があるうちに、どのタイミングで改革に着手すべきと考えていますか。また、地域医療を守るための最適な経営形態についても見解を伺います。

311◯議長(永山英人) 市民病院事務部長。

312◯市民病院事務部長(高山 崇) 「西尾市民病院経営強化プラン」では独自の経営強化策を進めることを最優先にしており、改善を進めている真っただ中であります。経営形態の改革については検討段階に入っておらず、病院職員のモチベーションにも直結することから、検討すること自体も大学医局や他病院の動向、最新の医療事情等を見極めた上で慎重に判断してまいります。

313◯議長(永山英人) 中村議員。

314◯7番(中村直行) 西尾市民病院が地域医療を支え続けるためには、今の経営強化プランだけでは十分とは言えません。あま市民病院が指定管理者制度で経営効率を上げ、診療体制を充実させた成功事例は西尾市にとっても大きな参考となります。改革には職員のモチベーションや地域の理解も大事ですが、それを理由に進めるのが遅れてしまっては本末転倒です。今のうちに次の経営形態を具体的に検討し、地域医療を守るための行動を早急に始めるべきだと思います。
 西尾市民病院がこれからも地域の医療を守り続けるためには、現状にとどまらず、新しい経営の仕組みを取り入れる必要があります。あま市民病院のように、指定管理者制度を活用し、診療体制を強化しながら経営効率化を図ることが、地域住民に安心を届ける道筋となるはずです。改革を進めるタイミングは今しかないと思います。
 視察の最後に、あま市の山本雄一副議長に指定管理者制度の成功の秘訣は何ですかと伺った際、返ってきた言葉は、「経営責任者である断らない医療を目指す市長の覚悟」でした。この言葉に、地域医療を支えるための確固たるビジョンと覚悟が成功の鍵であることを改めて感じました。本市でも、この覚悟と行動が求められている時期に来ていると思います。市民一人一人に寄り添いながら、100年後も持続可能な医療体制を築くために、今こそ地域全体で覚悟を共有し、大きな一歩を踏み出すときではないでしょうか。
 続きまして、議題2に参りたいと思います。
 地域共生社会の実現に向けた重層的支援体制への移行準備の状況についてであります。
 令和6年6月議会における私の質問を受けて、本市が重層的支援体制整備に着手する方針を表明したことは大変意義深い一歩でありました。昨日の一般質問では、大塚議員から重層事業における社会福祉協議会の役割、松井議員からは福祉サービス窓口の名称変更について、小林議員からは高齢者の孤独化や孤立死への対応、そして今日は、前田議員から終活支援など、それぞれ重要な指摘がありました。重層的支援体制整備に対する市民や議会の期待が非常に高まっていることを実感しております。この期待に応えるため、具体的な成果を示しながら着実に取組を進める必要があります。本議題では、この重要な取組の進捗状況や課題、そして、今後の展望について明らかにするとともに、市民一人一人に寄り添う福祉政策の新たな形を構築するために必要な具体策について質問をしてまいります。
 それでは、まず、質問要旨(1)に参りたいと思います。
 重層的支援体制への移行準備について、現時点での進捗状況はどのようですか。また、今後の具体的なスケジュールについて伺います。

315◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

316◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 本年4月に福祉課に重層事業移行検討のためのプロジェクトチームを、民間職員2名を含む7名で編成しました。PTでは、厚労省などのオンライン研修を受講したり、滋賀県と神奈川県の先進地を視察したりして、その検討成果を9月に、内部資料ですが、重層事業移行準備基本計画、通称コアプランとして策定しました。コアプランでは、包括的相談支援事業や参加支援事業など、重層事業の5つの事業の現状・課題・現時点での移行方針などを示し、行政と民間の相談支援機関に配布、説明して、関係者からの質問、意見も募集しました。それを踏まえてコアプランをブラッシュアップし、実施計画を策定し、市議会に報告することを予定しています。
 なお、コアプランでは、重層事業の移行予定年度を8年度とし、市民には分かりにくい重層事業という法律用語を「~すべての人のために~つながりの輪支え合い事業」と改めることにしました。また、官民連携による多機関協働で全国的にも有名な神奈川県座間市の「断らない相談支援」を学ぶ特別研修会を11月に開催し、行政及び民間の相談支援窓口の関係者が約100人受講しました。
 令和7年度は移行準備期間として、庁内連携体制の推進や多機関協働事業として困難事例のモデル支援を実践するほか、地域の社会資源や支援メニューの開発を行っていきたいと考えています。

317◯議長(永山英人) 中村議員。

318◯7番(中村直行) ただいま答弁いただきました内容を受けまして、幾つか確認をさせていただきます。
 重層的支援体制整備の準備段階として策定されたコアプランについて、その作成に携わったプロジェクトチーム、PTの具体的なメンバー構成はどのようになっているのか。また、現在ブラッシュアップ中の実施計画について、議会への報告はいつ頃を予定しているのか、改めて伺います。また、座間市の特別研修会に関する参加者の感想についても教えていただければと思います。

319◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

320◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 初めに、PTメンバーは、自分以外に福祉課の生活保護や障害福祉等を担当している社会福祉士や精神保健福祉士等の4名に社会福祉協議会の社会福祉士兼介護支援専門員とコンパス施設長の計7名になります。
 次に、コアプランをブラッシュアップして策定します実施計画については、可能であれば今年度中に議会には報告していきたいと考えていますが、PTメンバーはいずれも兼任で重層事業の検討を行っているため、あくまで予定となります。
 最後に、座間市の「断らない相談支援」の研修ですが、NHKが座間市の取組を半年間密着取材したドキュメンタリー番組の試聴と座間市職員の講演という2部構成で実施しました。参加者アンケートの途中経過で申し上げますと、「断らない相談支援に対する理解度が向上した」と回答した方は91%、「研修が自分の仕事に活用できる」と回答した方は77%、「西尾市で重層事業への移行が必要」と回答した88%、「西尾市で断らない相談支援が実現できる」と回答した方は51%でありました。

321◯議長(永山英人) 中村議員。

322◯7番(中村直行) ご答弁を伺い、重層的支援体制整備に向けた着実な取組が進められていることを評価いたします。特にPTが多様な専門性を持つ官と民のメンバーで構成されている点は重要ですが、兼務体制による進行の遅れが懸念されます。重層事業の検討時間が確保できるような人事的配慮が求められるところです。
 また、座間市の研修成果は高く評価できますが、西尾市での現実、実現可能性についての回答が51%にとどまっているのは課題です。恐らく西尾市の重層事業の在り方については、まだ、イメージがつかないことからの結果だと思いますが、今後はこのギャップを埋めるために、支援現場に対する丁寧な説明や意見交換などを重ねて、支援現場の理解を深めていく努力が必要になると思います。
 要旨(2)に参ります。
 現代社会の変化に伴い、市民が抱える課題は複雑化・多様化しています。現行の福祉制度では対応が難しい困難事例が増加している現状について、市はどのように認識していますか。また、市民への支援体制の現状についてはどのような課題がありますか、お伺いします。

323◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

324◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 本年6月に重層事業に対する潜在的な地域ニーズを把握するためのアンケート調査を市役所と民間の各相談支援窓口を対象に実施し、83機関から回答がありました。それによりますと、昨年度中の困難事例の対応件数は4,407件で、1つの窓口当たり平均53件、全体の相談件数のうちの割合としては4.1%でした。また、子ども・若者を対象にした総合相談窓口であるコンパスの利用者や、小中学校の不登校児童生徒数も引き続き増加していることからも、既存の支援制度では対応できない複雑化・複合化した困難や生きづらさを抱えている市民は決して少なくなく、困難事例についても今後も増加していくと見込んでいます。
 次に、支援体制の現状の課題については、多機関協働した場合にリーダーシップを取る機関がないので、役割分担や支援方針の共有ができないこと、相談内容からどこに連携してよいか分からないこと、また、細分化された福祉制度で市民がどの窓口でどのような相談ができるかが分かりにくいことなどを把握しています。

325◯議長(永山英人) 中村議員。

326◯7番(中村直行) ただいまの答弁を受けまして、さらに詳細を確認させていただきたい点がございます。
 まず、現在移行準備中の重層的支援体制整備事業において、リーダーシップの不在や連携の不足といった問題が指摘されていますが、これらの課題対策をどのように考えていますか。

327◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

328◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 先ほど答弁しましたアンケート結果からも、行政の縦割り主義により、多機関協働においてリーダーシップを取る機関がなくて支援が進まないことや、どこに連携してよいのか分からないなどの課題があることが分かっています。そのため、縦割りの壁を越えて横断的組織で誰一人取り残さない新たなセーフティーネットとして重層的支援体制を構築していくためには、断らない相談支援窓口の設置が必要と考えています。

329◯議長(永山英人) 中村議員。

330◯7番(中村直行) ただいまのご答弁では、縦割り行政の課題を克服する対策として、断らない相談支援窓口の開設の必要性が示されました。具体的には、この窓口が新たなセーフティーネットとして機能し、多機関協働を推進する要となるべきとのご見解を伺いました。
 そこで、さらに踏み込んで確認をさせていただきます。
 断らない相談支援窓口の設置に向けた準備が進められていますが、市の方針はどのようか、お伺いします。

331◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

332◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 断らない相談支援窓口は、属性や世代を問わない包括的相談支援事業と多機関協働事業の要石の役割と重層事業のマネジメント機能も担う窓口として、福祉課の生活困窮担当を核に、官民連携によって8年度に開設・運営していくことを計画しています。
 断らない相談支援窓口は、子ども・障害・高齢者・生活困窮など各分野の既存の相談支援機関と並列の立場で、伴走型支援を基本にした断らない相談支援を実践するものです。
 断らない相談支援窓口では、市民に対しては、「全ての困り事を幅広く受け止めます」とPRしていますが、当事者の年齢や複合的な困り事の一番の要因などを分析した上で、最適な既存の相談支援機関につなぐことや、多機関協働事業の役割分担、支援方針を調整決定するリーダーシップ権能を有することを想定しています。また、支援する側の人と人とのつながりの強化がセーフティーネットそのものであるという意識を高めていくため、断らない相談支援窓口は、支援する側の後方支援機関としての役割も担い、各機関の連携を深めるとともに、十分に機能が発揮されるよう努めていきます。

333◯議長(永山英人) 中村議員。

334◯7番(中村直行) 断らない相談支援窓口が福祉課の生活困窮担当を核として開設される計画であるとのことですが、この生活困窮担当を中心とする理由について、より詳細にお伺いします。

335◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

336◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 先ほど答弁しました潜在的な地域ニーズを把握するためのアンケートでは、83機関の困難事例の課題として最も多かったのが経済的困窮で、次いで人間関係、暴力・DV関係、障害、孤独・孤立、病気・けが、借金・多重債務、子育て・教育などが上位にありました。
 また、今後の相談支援を行う上で連携強化をより必要と考える分野として最も多かったのが生活困窮・生活保護で、次いで子供・子育て、障害、外国人が多く求められていました。
 このように、多様な生きづらさや社会的困難の背景では、生計を維持または自立していくための経済的支援が最大公約数的に求められていることから、生活困窮担当を窓口の中心に置くことを考えました。

337◯議長(永山英人) 中村議員。

338◯7番(中村直行) さらに詳細な確認をさせていただきます。
 断らない相談支援窓口が福祉課の生活困窮担当を核として開設される理由については、経済的困窮が困難事例の中心に位置しているということが要因であるとご説明がありました。この点を含めて、断らない相談支援窓口がほかの窓口と並列の立場にありながら、多機関協働の調整役としてどのように実際の調整を行い市民にとっての利便性を向上していくのか、その具体的な調整方法や連携の仕組みについて、より分かりやすい形でご説明いただければと思います。

339◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

340◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 断らない相談支援窓口は、属性や世代を問わない、全ての市民のための相談窓口ではありますが、市内には世代や分野別の既存の相談窓口として子育て世代包括支援センター、子育て支援センター、児童発達支援センター、コンパス、相談支援事業所、地域活動支援センター、地域包括支援センターなどがあります。いずれの窓口も断らない相談を基本としていますが、実際は、制度のはざまで困り事を抱える市民で40歳から64歳までの方を支援する機関はありませんし、場合によっては、たらい回しが起こり、結果として、相談者が断られたという事例が見受けられる現状もあります。また、アンケート結果でもあったように、窓口同士の連携や協働による多機関の支援が円滑に行われていない実態もあります。
 したがって、今の支援体制で見られるこうした課題を克服するために、断らない相談支援窓口を重層事業の移行を契機に新設するものです。ただし、全ての相談を断らない支援窓口で支援することは物理的には不可能なので、全ての困り事を幅広く受け止めた上で、最適な相談支援機関につないだり、多機関の役割分担や支援方針の調整、共有を図ったりすることで包括的な支援体制が停滞しないようにマネジメントすることが断らない相談支援の窓口の存在意義になります。もちろん断らない相談支援窓口においても、どの窓口でも該当しない困難事例などの支援は行いますので、相談支援と連携調整とした二刀流の役割を果たすことになります。
 言い方を換えると、断らない相談支援窓口の開設により、窓口担当者が担当業務を超えて全部引き受けるのではなく、担当業務を超えたニーズをみんなで受け止め、最終的に各部署の負担を減らすことを目指していきたいと考えています。

341◯議長(永山英人) 中村議員。

342◯7番(中村直行) 8年度から新設される断らない相談支援窓口は、包括的支援体制を維持するために、相談支援と連携調整という2つの大きな役割を担っていくことが分かりました。
 次の質問に参ります。
 重層的支援体制への移行に伴い、市民の受けられる利便性の向上や迅速な問題解決が期待されていますが、具体的にどのような取組を考えていますか。

343◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

344◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 先ほども答弁しましたとおり、市民側から見た包括的相談支援体制と支援する側から見た体制には少し違いがあります。国が重層事業で求めているのは、こまで培ってきた専門的な既存制度の活用により、制度のはざまで生きづらさや社会的困難を抱える全ての市民をサポートすることです。そして、その既存の相談窓口が市民に分かりにくい、つまり、どの窓口でどのような相談ができるかが分からないといった課題もあります。そのため、松井議員の一般質問でも答弁しましたとおり、重層事業移行に併せて既存の相談支援窓口の名称を分かりやすく変更することも計画しています。既存の相談支援窓口の見える化を図ることにより、相談難民となる市民を一人も出さないことを目指しています。
 ちなみに、宮沢賢治の有名な「雨ニモマケズ」という詩に、「東に病気の子供あれば 行って看病してやり 西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い…」という有名な一節がありますが、これは、これから目指す、つながりの輪支え合い事業の基本姿勢でもあります。この姿勢を既存の相談支援窓口に拡大定着させていくことにより、「市民のための断らない相談支援」を実現していきたいと考えています。

345◯議長(永山英人) 中村議員。

346◯7番(中村直行) 既存の相談窓口の名称変更による見える化によって、市民が安心して相談できる環境が整うことは評価したいと思います。また、誰一人取り残さないという理念に基づく市民のための支援体制の構築が、市民の利便性向上と迅速な問題解決につながることに大いに期待をしております。今後も市民目線を大切にした取組をお願いいたします。
 では、質問要旨(4)に参ります。
 重層的支援体制の中で参加支援が重要な役割を果たすと考えられますが、特に、地域と民間の連携によるひきこもり支援や就労支援について、どのように進めていきますか。また、地域の社会資源をどのように把握していくつもりか、お伺いします。

347◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

348◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 議員のおっしゃるとおり、重層事業では新規事業である参加支援事業が非常に重要な支援ツールになります。参加支援事業とは、ひきこもりなど社会とのつながりが希薄な孤独・孤立化している人を支援するため、地域の受入れ先を開拓し、そことマッチング、コーディネートを行い、多様な社会参加につなげていくものです。
 参加支援の課題は、個別ニーズの把握と、それにマッチングできる地域の社会資源の開拓や発見であります。そのため、個別ニーズの把握については、同じく新規事業でありますアウトリーチ等事業により、「気づき」から「つなぐ」ことを職員研修などでスキルアップして対応することを計画しています。社会資源の開拓や発見については、先進事例を参考に、既存の社会支援の拡充を検討したり、マッチング可能な地域の社会支援を地道なフィールドワークで探したりすることのほか、長期的な伴走型支援の方法や支援者が変更となる場合のつなぎ方も研究していくことも計画しています。ただし、参加支援事業の構築には一定の試行錯誤する時間を要するため、重層事業移行予定年度から一定期間を経て完成形に近づけていくことを想定しています。

349◯議長(永山英人) 中村議員。

350◯7番(中村直行) 参加支援事業は重層的支援体制の柱であることを再確認しました。地域の受入れ先を開拓し、孤立した方々を社会につなげる取組は、市民全体の福祉向上に直結する重要な施策です。
 しかし、事業の成功には地域全体を巻き込む仕組みが欠かせません。医療、福祉機関はじめ、住民や事業者への啓発を進め、支援のつながりの輪を広げる具体策をさらに強化していただきたいと思います。また、長期支援に伴う人材確保や負担軽減策についても万全を期していただく必要があります。
 最後に、地域資源の見える化を迅速に進め、市民と行政が共有できる情報基盤を構築してください。市が主導して、つながりの輪を確実に拡大し、誰も取り残さない社会の実現を目指していただきたいと思います。
 最後の質問になります。
 重層的支援体制の構築を進めるにあたり、その継続的な運営と発展には安定した財源の確保が不可欠です。国が新たに創設した重層事業の一括交付金は、各分野の既存制度だけではなく、新規事業を支える重要な財源であり、その活用方法は体制の成否を大きく左右します。さらに、国庫補助や地域づくり事業に関わる補助金の活用戦略についても、効率的かつ効果的な運用が求められます。
 質問要旨(5)としまして、重層的支援体制を維持するため、一括交付金をどのように活用しますか。また、財源確保のための戦略をどのように考えていますか、お伺いします。

351◯議長(永山英人) 健康福祉部次長。

352◯健康福祉部次長(鈴木貴之) 重層事業に着手した場合、子供、障害、高齢者、生活困窮の各分野の既存制度である包括的相談支援及び地域づくり事業に係る現行の補助金と、参加支援、アウトリーチ等事業及び多機関協働の新規事業に係る事業費が一括して重層交付金として市町村に交付されます。
 この一括交付金化により、補助対象業務の制約が緩和されるため、これまでは既存制度では対応できなかったケースに対する必要経費にも交付金の活用が可能となります。
 なお、既存の補助金は交付金にスライドしても金額に大きな変更はありませんが、3つの新規事業に対する交付金は本市の人口規模で4,200万円で、補助率は4分の3になります。また、既存制度で未着手の生活困窮者支援等のための地域づくり事業の補助金は900万円で補助率4分の3ですが、これも新たな地域づくり事業での活用を考えています。
 そして、令和7年度の移行準備期間も1,050万円の国庫補助が受けられます。これは、断らない相談支援窓口の開設準備費をはじめ、庁内連携体制の構築及び多機関協働事業のモデル支援などに活用する予定です。

353◯議長(永山英人) 中村議員。

354◯7番(中村直行) ご答弁を伺い、一括交付金により市の財政負担を抑えながら、柔軟な財源運用による持続可能な運営や効率的な事業展開についての活用戦略を描いていることがよく分かりました。
 また、断らない相談支援窓口や多機関協働モデル事業の効果を早期に検証し、その成果を市民に分かりやすく示すことで、さらなる信頼構築を図っていただきたいと思います。
 最後は、市長にお尋ねします。
 新たなセーフティーネットとして大きな期待を背負っています断らない相談支援窓口を中心に据えた、「~すべての人のために~つながりの輪支え合い事業」への移行がいよいよ開始されますが、何といっても、庁内及び庁外の連携体制を構築しなければ新たなセーフティーネットは機能しません。本市のみならず、どの自治体も大変苦労している市役所の組織間連携を市長のリーダーシップで、職員異動があっても常に実働的な形で継続されていくことが必至でありますが、市長の熱い思いを語ってください。

355◯議長(永山英人) 市長。

356◯市長(中村 健) 福祉部門の対応に限ったことでは本来ないのですけども、議題が福祉なので福祉ということで申し上げますと、職員一人一人、非常に真面目に窓口対応をはじめ仕事をしてくれていますので、それ事態は非常に僕の立場として頼もしく思っています。
 ただ、その一方で、個別具体的な対応については、お叱りのお声ですとか、あるいは厳しいご指摘を市民の方々ですとか、あるいは議員の皆様からいただくこともあります。
 これはなぜなのかというように考えていくと、自分的には大塚議員が9月定例会でおっしゃった間違っているわけではないというところに一番本質があるのかなというように思っていて、それを間違っているわけではないからよしとするのか、間違っているわけではないけれども、最善ではないので最善の方法を見出していくのかというところが多分問われているというよう思います。
 我々行政の仕事というのは、便宜上、何々課とか何々担当とかいう形で部門をつくって縦割りで仕事をしておりますけれども、その縦割りというものは、あくまでも目的を達成する手段の便宜上の理由だというように思っていて、縦割りを守ることは目的ではないわけです。それが日々の仕事の中で、一つ一つの事業について何が目的で何が理念なのかというところをしっかり考えないと、その縦割りを守ってしまうことが目的になってしまっていて、結局、これはうちの仕事じゃないから、どこどこ課がやるべきでしょとかっていうことが幾つか起こっていて、そういうものが市民の方々の目について、これはおかしいんじゃないかということにつながっているんだろうと、僕はそういうように思っています。
 じゃあ、それを解消していくためにどうすればいいかというのは、なかなか抜本的にすぐにというのは難しいのかもしれませんけれども、1つは仕組みですとかルールのほうでそういったことが起こらないようにしていくということになるというように思います。ですので、よく立ち上がり時のメンバーがいたときは機能したけれども、その人がいなくなってしまったら機能しなくなってしまうというのは世の中でいろいろある話でありますけれども、それはルール化がしっかりできていないことだというように思いますので、今回の重層事業への移行に伴って、そこの理念だとか、あるいは取扱いのルール、仕組みについてはしっかりよくよく考えながらつくっていきたいというように思います。
 もう一つは、そうは言っても、やはり制度を運用するのは結局人になりますので、人の意識ですとか姿勢が変わらないと実際には十分に機能しないんだろうなというように思っています。その縦割り意識を守るのじゃなくて、あくまでも市民本意に考えることの重要性というのは、実は今年度の施政方針にも入れていますし、自分の朝の館内放送だとか部長会議とか、機を見て言っているつもりではあります。
 なので、今後ともトップとして、そこの必要性についてはしっかりとメッセージを発していくということはまずはやらせていただくんですけども、それ以外に、やはり外部から指摘をいただくということは僕は大事だというように思っていて、そういうチェックが働いているからしっかりやらんといかんなというのは、あまりいいことじゃないんですけれども、そういったところはしっかり仕事をやるための1つのインセンティブというか、そういったところに働いてくると思いますので、議員の皆様におかれても、しっかり対応ができていないということであれば、そこは厳しくご指摘いただければ、原因をしっかり分析した上で、組織として共有をして、じゃあ、そういった同じことが起こらないためにどうすればいいかというところはしっかりやっていけるというように思いますので、今後ともよろしくお願いしたいというように思います。
 あとは、そうした縦割りにとらわれることのなく、本当に市民本意で物事を考えて行動できる職員については、やはり人事面でしっかり処遇をしていくということも大事なので、そういったことを複合的にしっかりやりながら、今回の重層事業への移行を機に、西尾市役所全体の組織力が上がっていくようにしっかり頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

357◯議長(永山英人) 中村議員。

358◯7番(中村直行) 市長の熱い思いがとてもよく伝わりました。ありがとうございます。
 今回の質問を通じて、本市が重層支援体制の移行準備に向けて着実に歩んでいることはよく分かりました。断らない相談支援窓口を核とした包括的な支援体制のビジョンを整備しなければならない背景には、本市においても深刻な地域のニーズが顕在化している実態があることを改めて認識いたしました。
 また、市長自らが組織間の壁を取り払い、職員一人一人が柔軟かつ積極的に課題解決に取り組める職場環境を目指す姿勢には感銘を受けました。このような取組は、市民一人一人に寄り添う支援を実現するための力強い基盤になると確信をしております。
 しかしながら、まだまだこれから移行準備に向けての大きな山が幾つも控えていると思いますが、市議会としても西尾市の重層事業が地域共生社会の実現につながる全ての市民のためのセーフティーネットとして整備されるように、引き続き注視していきたいと思います。
 これで、本議題の質問を終わります。ありがとうございました。
      〔7番 中村直行 降壇〕